六月二十五日 はれ
空港を出ると、椰子の木が茂っていた。
なるほど南国である。
暑い。
迎えが来ているはずなので、きょろきょろしていると、
青い半被を着たアリクイがやってきた。
あたしの前に立ち、トランプを扇のようにするりと広げる。
どうぞ、と、うながすので、しかたなく一枚引いた。
「獏のエース」
見ればたしかに、白いトランプの真ん中に、ぽつんと小さな獏が描かれている。
どことなく、寂しげな獏である。
「お待ちしておりました。どうぞこちらに」
あたしのボストンバッグを手に、ずんずん歩いていくアリクイのあとを追いながら、
そう言えば、アリクイと獏はよく似ているな、親戚であろうか、と、ふと思う。
空よりも青い半被が、目に眩しい。